今日は色々な人々の推理が飛び交うアントニイ・バークリーが書いた「毒入りチョコレート事件」という小説についてご紹介したいと思います。前回書いた「隅の老人の事件簿」は老人と女性記者の二人の推理でしたが、この作品では1つの殺人事件に対して6人がそれぞれの推理を繰り広げます。
ストーリーはというと・・・
ロジャー・シェリンガムを会長とする「犯罪研究会」に友人のモレスビー警部から一つの事件が持ち込まれます。それは「毒入りチョコレート事件」でした。
ユーステス卿と友人のベンディックスが通うクラブにユーステス卿宛にチョコレート製造会社から試供品が届けられます。ユーステス卿はそのチョコレートをベンディックスに譲りますが、それを持ち帰り食べたベンディックス夫妻は中に入っていた毒の為、夫人は死亡し、夫はかろうじて命を取り留めます。
この毒入りチョコレートを送った犯人は誰なのか?
この五里霧中の事件を「犯罪研究会」の6人のメンバーが自分達で独自の捜査を行い、1週間後もう一度集まりそれぞれの推理を披露することになります。メンバーには刑事弁護士、推理作家達が含まれています。
1週間後、メンバー達がそれぞれの推理で犯人を指摘していく中、遂に5人目のメンバーが決定的な推理を展開します。誰もが納得する結論の為その結論を警察に報告しようとした時、6人目のメンバーがそれを止めさせて自分の推理を発表します。
6人目のメンバーが発表した驚愕の推理とは・・・
今日はバロネス・オルツィの書いた「隅の老人の事件簿」について書きたいと思います。これは安楽椅子探偵(アーム・チェア・ディテクティブ)物と呼ばれるミステリーの一つです。
前回書いたシャーロック・ホームズは非常に活動的で、殺人現場には出向き足跡や煙草の灰や現場の状況を自分の目で確認し、目撃者や関係者にも自分で会いにいって話を聞きにいきます。
安楽椅子探偵は自分はじっとしたままで殺人現場の調査は自分で行わず、事件の状況や関係者の発言などは伝聞や新聞記事などから情報をへて、それらの材料を元に推理し犯人を指摘します。
関西では「安楽椅子探偵シリーズ」という懸賞付き推理ドラマが綾辻行人さんと有栖川有栖さんとの共同の原作で現在までに6回放送されていて、ミステリーファンの方は「安楽椅子探偵」という言葉をテレビで知ったかたも多いのではないでしょうか。
「隅の老人の事件簿」は短篇集で全部で13話の短編が載っています。
ストーリーの形は常に決まっていて、ABCショップという喫茶店に女性新聞記者であるポリー・バートンが昼食をとりに行きます。彼女はいつもその店の隅のテーブルの席に座るのですが、ある時その席に奇妙な小さな老人が座っています。そして二人は相席となり、今新聞で騒がれている事件のことについて議論します。
隅の老人には名前がありません。いつも紐をいじっていて妙な結び目を作ってはほどき、作ってはほどきを繰り返し、新聞で騒がれている事件について自分独自の推理を展開し、新聞や裁判結果や女性記者の結論とは全く違った別の解答を導き出しそれを彼女に語ると席を立って店から去って行きます。
今日はミステリーのなかでも探偵といえば一番有名なシャーロック・ホームズが登場する、コナン・ドイルの書いた「シャーロック・ホームズの冒険」について書いてみたいと思います。(漫画で連載されテレビでアニメ化されている「名探偵コナン」のコナンという名前はホームズの作者のコナン・ドイルの名前からとられています)私はこの「シャーロック・ホームズの冒険」を中学生の時に図書館で初めて読みました。それからシャーロック・ホームズのシリーズに夢中になり、高校に入ってからは文庫本を買い、社会人になった時には高校の時買った文庫本は実家に置いて来てしまっていたのでまた文庫本を買いました。今でも時々ふっと手に取って読んでしまいます。
「シャーロック・ホームズの冒険」は短篇集で12編の話が載っています。
イギリスではホームズのシリーズは「緋色の研究」(1887年)「四人の署名」(1890年)の長編の作品が発表された後、この「シャーロック・ホームズの冒険」が1892年に発表されます。
もともと私は短編集が好きです。というのは本を読むのはたいていは就寝前の布団に入ってからで、私は布団に入ってから眠くなるのに大体30〜40分ほどかかります。(布団に入って5分〜10分ほどですぐ眠れる方がちょっと羨ましい・・・)
それで短編集だと1話を読み終えると丁度眠くなってそのまま眠りに就くという形になります。現在のミステリーは長編が多くて、特に最近の海外の翻訳されるミステリーはどんどん長くなって来ているようで、文庫本でもとても分厚くてなってきています。(中の文字が昔よりも字のサイズが大きくなっていることも影響しているのでしょうけれども)
そういえば、日本では作家さんの原稿料は原稿用紙1枚に対して値段が決まっているそうですが、海外の作家さんだと文字数か単語数で値段が決まるという話を聞いたことがあるので、それでだんだん海外の長編はどんどん長くなってきてるのでしょうか・・・
もともと最初の推理小説といわれるエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」も短編ですし、江戸川乱歩さんの書かれた明智小五郎が最初に登場する「D坂の殺人事件」も短編だったのですけど・・・
シャーロック・ホームズの短篇集は「冒険」の後にも「回想」「生還」「最後の挨拶」「事件簿」と続きますが中でもこの「シャーロック・ホームズの冒険」が一番バラエティに富んだ事件が含まれていて満足度の高い作品が多く含まれています。「赤毛連盟」「唇の曲った男」そして有名な「まだらの紐」もこの中に収められています。私が一番好きなのはこの短編集の1番目に収録されている「ボヘミアの醜聞」です。
<ここからは「ボヘミアの醜聞」の内容について深く触れますので未読の方はご注意を>
明日から深田恭子さん主演の「富豪刑事デラックス」がテレビで始まるので、今日はこの「富豪刑事」の原作の小説を書いた筒井康隆さんのミステリーの作品について書こうと思います。といっても「富豪刑事」の方ではなくて「ロートレック荘事件」です。
筒井さんといえば、やはりSF小説の作家さんというイメージが強いと思います。
特に「七瀬ふたたび」はテレビでドラマ化されましたし、この小説は読んだ方も多いと思います。
でも筒井さんはSF小説だけではなくて、ブラックユーモアの小説も沢山出していますし、エッセイも沢山書いています。(筒井さんの書くエッセイはとっても辛口です)
そんな筒井さんが書くミステリーですからなかなか一筋縄であるはずがありません。
「富豪刑事」は、設定は大金持ちの刑事という形をとっていますが、実際の中身はアリバイトリックや殺人方法のトリックはとてもオーソドックスな本格ミステリーの形をとっていました。(小説の主人公はテレビと違って女性でなく男性です)
ですが「ロートレック荘事件」は本格は本格でもミステリーとしてはかなりの変化球の小説です。
ストーリーはというと・・・
ロートレック荘に青年達が招かれます。
そのロートレック荘には3人の美女がいます。
恋愛感情が色々ともつれる中、その美女達が次々と殺されていく・・・
犯人はいったい誰なのか・・・
<ここから少しネタバレしているので注意>
昨日は少し異色の探偵のことを書いたので、今日も異色のホテル専属探偵「ホテル探偵ストライカー」について書きたいと思います。作者はコーネル・ウールリッチです。「幻の女」という有名な作品を書いた人だといえばミステリー好きのかたならわかって下さると思います。
(「幻の女」はウイリアム・アイリッシュという別名で書かれています)
また映画ファンならヒッチコック監督の「裏窓」の原作を書いた人だといえばわかって頂けると思います。
この本は集英社文庫の「世界名探偵コレクション10」の中の9番目に入っています。
ストーリーはというと・・・
場所は1929年に起こった世界大恐慌のあとの1933年のマンハッタン。
聖アンセルム・ホテルの913号室から一人の男が飛び降り自殺をします。
ホテル専属探偵のストライカーは調査しますが部屋は鍵が掛かっていて、ドアの鍵も部屋の中にあり、さらに遺書までが残されていました。開いているのは飛び降りた窓のみ・・・。
ストライカーは不信を拭えないものの事件は自殺で片付けられます。
翌年、同じ913号室から男が飛び降り自殺をします。現状は前と全く同じ。この事件も自殺として片付けられます。
さらに翌年ストライカーは職を捜していた人間を雇い彼を913号室の部屋に泊まってもらうようにします。
だがその人間も同じ状況で飛び降ります。
ストライカーは責任を取りホテルを辞めて翌年自分自身がそのホテルの913号室に泊まりに行きます。果たしてストライカーは真相を暴くことが出来るのか・・・
アイリッシュらしくサスペンス溢れる作品になっています。
この本には5編の短編が収められていて、最初と2番目の「913号室の謎 自殺室」と「913号室の謎 殺人室」にストライカーは登場します。なお3番目には「裏窓」も収められています。
でもホテル専属の探偵さんなんて実際に存在したんでしょうか?
余談ですが「世界名探偵コレクション10」の6番目がメグレ警視で、この本で私はジョルジュ・シムノンのメグレ警視の作品を初めて読みました。
京極夏彦さんの京極堂シリーズにはスーパー探偵榎木津が登場しますが、アガサ・クリスティの小説の中にも榎木津に負けない位のスーパー探偵が登場する作品があります。それが「謎のクィン氏」です。クリスティの小説にはエルキュール・ポアロとミス・マープルという大変有名な探偵がいますが、この探偵ハーリ・クィン氏はクリスティの作品の中ではとてもマイナーですが、あまりにも風変わりな探偵な為、私には強く印象に残っています。
小説「謎のクィン氏」は短編集です。その全てに男女のロマンスが絡んでいます。
何故この小説の探偵クィン氏が風変わりかというと、実際にはクィン氏が事件を解決するのではありません。実はこの小説にはもう一人シャーロックホームズの作品であればワトソン役になるサタースウェイト氏が登場し、この人が事件を解決します。クィン氏はただ事件の解決の糸口を語るのみです。
ほとんどの場合で先に事件に関わるのはサタースウェイト氏です。クィン氏は偶然そこに現れます。そしてクィン氏はサタースウェイト氏に助言を与えサタースウェイト氏が事件を解決すると、いつのまにかその場から退場しているのです。
前回、京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」の映画化の話に少し触れたので、今日は京極夏彦さんの小説について書きたいと思います。映画化された「姑獲鳥の夏」が京極さんのデビュー作です。初めて「姑獲鳥の夏」を本屋で見た時、ついに横溝正史テイストの新本格が出てきたと喜びました。
今も人気の京極堂シリーズですが、私がこのシリーズで一番印象に残っているのが「塗仏の宴 宴の支度・宴の始末」です。あの分厚い京極堂シリーズがさらに上下巻になって登場です。
本当はこの「塗仏の宴」の一つ前に出ている「絡新婦の理」も好きな作品です。
「絡新婦の理」はいきなりプロローグで京極堂こと中禅寺がいきなり犯人を指摘するところから始まります。それが一番最後のページと繋がるという素晴らしい構成です。最後まで読んだら必ず最初のページのプロローグをもう一度読みたくなります。
でも私は「塗仏の宴」の方が印象深いです。それはこの「塗仏の宴」で京極堂シリーズの主要な人物が一同に登場する、まさしく京極堂オールキャストの小説だからです。(「絡新婦の理」の登場人物まで絡んでいます)
構成は次のようになっています。
まず「塗仏の宴 宴の支度」では6つの不思議な事件が語られます。
そして「塗仏の宴 宴の始末」ではそれらの6つの事件が本当は1つの大きな源からなっていたことが解明されていくという形になっています。
今日は綾辻行人さんの作品について書きたいと思います。(昨日、綾辻さんのことにちょっと触れたので・・・)
私が綾辻さんの小説で初めて読んだのがこの「十角館の殺人」です。
それから綾辻さんの小説は毎回楽しみでほとんどの作品を読ませて頂いております。
私がこの「十角館の殺人」を買って読んだのが新刊の「時計館の殺人」が本屋に並んでいましたから1991年の頃だと思います。
私が大学生の頃からだったと思うのですが、日本のミステリー小説は社会派と呼ばれる小説が主流になっていきました。松本清張さんや森村誠一さんの小説も読んでいたのですが、本格ミステリーが好きな私は海外のミステリーを読む傾向に移行していき、社会人になった頃には冒険小説やハードボイルドやSFや時代小説など乱読者になっていました。
もちろん日本の本格ミステリーが読みたかったのですが、本屋に行ってもなぜか日本の推理小説の方には足が向かなかったのです。でもそんな時に偶然出会ったのがこの小説です。
「十角館の殺人」は再び日本のミステリーを多く読むようになったきっかけの小説になりました。
この後、新本格ミステリーといわれる綾辻行人さんを筆頭に有栖川有栖さん、我孫子武丸さん、歌野晶午さん、二階堂黎人さん、法月綸太郎さん、麻耶雄嵩さん等々の小説を読むようになりました。
昨日はジョン・ディクスン・カーを書いたので、今日は現在ミステリー界でフランスのディクスン・カーと呼ばれているポール・アルテをご紹介します。この「第四の扉」が日本で翻訳された第一作目です。
それからだいたい毎年1作づつ翻訳されていて、この後に「死が招く」「赤い霧」「カーテンの陰の死」と続いています。
どれもとても面白いのですが、やはりこの第一作目が私は一番印象に残っています。
さて内容は・・・
昔、密室殺人が起こったオックスフォードの屋敷。そこで殺された人の幽霊が出るという噂話。
その屋敷に越してきた人々に次々と起こる不思議な事件。再び起こる密室殺人。そして名探偵アラン・ツイスト博士登場。
もう本格要素てんこ盛りです。
これから読もうと思っている人は絶対に最後のページを先に読んではいけません。
そこには衝撃のラストが待っているのですから。
小説のタイトルが「夜歩く」となれば、日本の横溝正史さんよりも海外の大御所ジョン・ディクスン・カーの方がやはり有名です。カーは不可能犯罪を主にした作品を多く書かれていて、その中でも密室物を多く手がけた事でも有名な作家さんです。
カーの作品の中に出てくる探偵と言えば、ギデオン・フィル博士とヘンリー・メリヴェール卿になるでしょう。でも、カーの作品の最初の頃はアンリ・バンコランという探偵が登場していました。
フィル博士とメリヴェール卿は大柄でとっても太っていて豪快なイメージなのですが、この「夜歩く」に登場するバンコランは太ってはいなくてシャープで繊細なイメージの探偵さんです。
私はカーの小説の中ではフィル博士とメリヴェール卿が登場する物ばかりを読んでいたのですが、3年ほど前、とある古本屋を覗いているとこの本を見つけたのでした。
丁度帰りの電車で読む本が無かったので買ったのを覚えています。
この本はカーの出した長編第一作目です。そして内容はカーの真骨頂、不可能犯罪です。
探偵のバンコラン達の見張っていた部屋に一人の人物が入ります。
その後バンコラン達がその部屋に入るとその人物が殺されています。
犯人はバンコラン達がいる前でどのようにその部屋に入り、どのようにその部屋を出て行ったのか・・・これがこの小説の大きな謎となります。

